フラクタル次元を時系列データから数値計算する方法として,「相関積分法」に よる相関次元推定がよく用いられるが,この方法は,「主観が入りやすい」, 「誤差推定が出来ない」などの欠点が問題となっていた.そこで提案されたのが, 「2点間距離分布の最尤推定法」による相関次元推定である[4]. ChaosTimesではこの方法が導入されている.
1変量の時系列データからアトラクタのフラクタル次元を推定するためには,低 次元から高次元までの埋め込み次元による再構成状態空間データに対して次元推 定をし,その飽和特性からアトラクタのフラクタル次元が推定される.
図7 は,実験データの次元推定結果であり,およそ2 から2.3付近に推定されていることがわかる.一方,元の時系列データが無相関 な雑音であれば,図8 に示したように,いくら埋め込み 次元をあげたとしても飽和しない.
「埋め込み定理」によれば,フラクタル次元の2倍以上の次元で遅延時間座標系 へ変換すれば,埋め込みが成立するのに十分である.実験データの推定値が2.25 であったとすると,4.5以上,つまり,5次元で埋め込みが保証されることになる. これはあくまでも十分条件であるので,5よりも低い次元で再構成できる可能性 はある.