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「決定論的カオス理論に基づく時系列解析システム」 計装 8月号 Vol.40 No. 8 (1997)

4.2 フラクタル次元推定

フラクタル次元を時系列データから数値計算する方法として,「相関積分法」に よる相関次元推定がよく用いられるが,この方法は,「主観が入りやすい」, 「誤差推定が出来ない」などの欠点が問題となっていた.そこで提案されたのが, 「2点間距離分布の最尤推定法」による相関次元推定である[4]. ChaosTimesではこの方法が導入されている.

1変量の時系列データからアトラクタのフラクタル次元を推定するためには,低 次元から高次元までの埋め込み次元による再構成状態空間データに対して次元推 定をし,その飽和特性からアトラクタのフラクタル次元が推定される.

7 は,実験データの次元推定結果であり,およそ2 から2.3付近に推定されていることがわかる.一方,元の時系列データが無相関 な雑音であれば,図8 に示したように,いくら埋め込み 次元をあげたとしても飽和しない.

  
図 7: 実験データのフラクタル次元推定

  
図 8: 一様乱数のフラクタル次元推定

「埋め込み定理」によれば,フラクタル次元の2倍以上の次元で遅延時間座標系 へ変換すれば,埋め込みが成立するのに十分である.実験データの推定値が2.25 であったとすると,4.5以上,つまり,5次元で埋め込みが保証されることになる. これはあくまでも十分条件であるので,5よりも低い次元で再構成できる可能性 はある.


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