まず,この1変量の時系列データからアトラクタを再構成するために,次式のよ うな遅延時間座標系への変換による埋め込みを行なう.
ここで, は1変量の観測時系列,nは埋め込み次元,はラグ, は変換された再構成状態空間データを表す.
図5 は,埋め込み次元4,ラグ7による例である.
図 5: 実験データの遅延時間座標系への変換によるアトラクタの再構成例
このように,アトラクタの再構成を試みることによって,視覚的に構造が明らか になる場合は,対象時系列に決定論的力学系としての法則性が内在する可能性が 高い.
また,図6 に,ラグが極端に小さい場合と大き い場合についての例を示す.
図 6: 実験データの遅延時間座標系への変換例 (a) ラグ1 (b) ラグ100
この例のように,ラグや埋め込み次元が適切でない場合には,視覚的に構造が理 解しにくくなる.通常,適切なラグは,時系列データの自己相関関数やパワース ペクトラムと視覚的な埋め込みを照らし合わせて決定する.また,適切な埋め込 み次元を決定するには,次に紹介するフラクタル次元解析の推定値から推測する ことが出来る.