解答例
以下の数列:
\[
a_{n+1} = a^{a_n},
\]
にて、よく解らないので、とにかく対数をとってみる。
\[
\log a_{n+1} = \log a^{a_n}
\implies
\log a_{n+1} = a_n\log a
\implies
\frac{\log a_{n+1}}{a_n} = \log a.
\]
まずは、数列の \(n\) と(対数の) \(n+1\) のときの関係が、初期値である定数 \(a\) であらわされることが分かっただけで、埒が明かないので考え直す。
以下のような、この数列と恒等写像 \(a_{n+1} = a_n\) を考える。
\[
\begin{cases}
a_{n+1} &= a^{a_n} \\
a_{n+1} &= a_n.
\end{cases}
\]
これらの交点 \(P = (a_{n+1}, a_n)\) と収束の関係は以下のようになると予想される(安定固定点については省略し、厳密な議論は別所に譲る)。
- 交わらないとき、\(a_n\) は発散する。
- 2点で交わるとき、小さい方の交点 \(P_1 = (a_{n+1}, a_n)\) に収束する。
- 1点で交わるとき、収束するときの最大値 \(P_0 = (a_{n+1}, a_n)\) となる。
これらの交点を求めることが可能か、とにかく以下を式変形してみる。
\[
a_n = a^{a_n}.
\]
どうしていいか解らないので、対数をとってみる。
\[
\log a_n = \log a^{a_n}
\implies
\log a_n = a_n\log a
\implies
a_n^{-1}\log a_n = \log a
\implies
\log a_n^{a_n^{-1}} = \log a,
\]
ゆえに、
\[
a = a_n^{a_n^{-1}} = \sqrt[a_n]{a_n}.
\]
ひとまず、収束するとき高々2つ存在するであろう交点は、求めてはいないのだが、存在するときの初期値 \(a\) を交点の座標値 \(a_n\) で表すことはできた。
さて、ただ一点でこれらが交わるときの \(a\) を求める。
恒等写像との重解による一点における交点なので、その点の傾きは1となる。よって、曲線を微分して1となる方程式が以下のように得られる。
\[
\frac{da_{n+1}}{da_n} a^{a_n} = a^{a_n}\log a = 1.
\]
まず、これが成り立つときの \(a_n\) を求める。
\[
a^{a_n}\log a = 1,
\implies
a^{a_n} = \left(\log a\right)^{-1},
\]
そして、底を \(a\) とする対数をとる。
\[
\begin{aligned}
a_n &= \log_a\left(\left(\log a\right)^{-1}\right),\\
a_n &= \dfrac{\log\left(\left(\log a\right)^{-1}\right)}{\log a} = -\left(\log a\right)^{-1}\log\left(\log a\right).
\end{aligned}
\]
ここで、底を変換してないものと変換したもの、それぞれ都合のよい方を次に使う。
さて、この \(a_n\) の条件のときに曲線と恒等写像の交点をあらわした式 \(a_n = a^{a_n}\) が成り立っているわけなので、代入して \(a\) を求めてみよう。
\[
a_n = a^{a_n}
\implies
-\left(\log a\right)^{-1}\log\left(\log a\right) = a^{\log_a\left(\left(\log a\right)^{-1}\right)} = \left(\log a\right)^{-1}.
\]
まず、底を \(a\) とする対数が消えた。さらに、
\[
-\left(\log a\right)^{-1}\log\left(\log a\right) = \left(\log a\right)^{-1},
\]
両辺に \(\log a\) を掛けて、指数を2度とれば、
\[
\log\left(\log a\right) = -1,
\]
\[
\log a = e^{-1},
\]
\[
a = e^{e^{-1}}.
\]
\(\Box\)
よって、初期値 \(a\) がネイピア数の、ネイピア数の \(-1\) 乗のときに \(a_n\) が最大に収束する。
参考文献
微分はやはり必要だったのと、某男が数列から得られる \(a^{a^{a^{a^\text{⋰}}}}\) を頼りに検索して見つけた文献 1, 2 を参考にした。
- アジマティクス, 無限べき乗a^a^a^...の収束と発散との境目が気になる, 2018.
- ねくノート, 無限の指数タワーと数学的カブトムシ, 2018.
- 志村五郎, 数学で何が重要か, ちくま学芸文庫, 2013.
- WikiPedia, テトレーション, 2021 閲覧.
- Corless, R. M., Gonnet, G. H., Hare, D. E. G. et al., On the Lambert W function., Adv Comput Math 5, 329–359, 1996. https://doi.org/10.1007/BF02124750
文献 1, 2 ともグラフも添えてあって非常に分かりやすい。文献 2 のように複素数に拡張するとさらに興味深い。
この数列で \(n\) 回の冪乗を「テトレーション」といい、文献 4. によれば以下のような表し方があるとのこと。
\[
{}^n a = \underbrace{a^{a^{a^{a^\text{⋰}}}}}_{n} = a\uarr\uarr n = \underbrace{a\uarr a\uarr a\uarr a\uarr \cdots}_{n}
\]
(誤った)補遺
問題に答えるべきのすべてに答えていないと思われるので、補足する。(注:これは筆者が間違えた無価値なものなので、hidden
属性にしてあるが戒めとして残しておく。)
この数列と恒等写像との片方の交点 \(P_1\) における微分において、以下の条件が成り立つとき \(\displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n\) が収束し極限値が存在する。
\[
\frac{da_{n+1}}{da_n} a^{a_n} = a^{a_n}\log a \le 1.
\]
これより、\(a_n\) を求めてみよう(手続きは不等号に注意する他は前節と同じである)。
\[
a^{a_n}\log a \le 1
\implies
a^{a_n} \le \left(\log a\right)^{-1}
\implies
a_n \le \log_a\left( \left(\log a\right)^{-1} \right)
\implies
a_n \le -(\log a)^{-1}\log\left(\log a\right).
\]
よって、本稿より \(a \le e^{e^{-1}}\) の初期値 \(a\) における極限値は、
\[
\lim_{n\to\infty} a_n = -(\log a)^{-1}\log\left(\log a\right).
\]
となった(が、数値計算で、例えば、\(a=\sqrt{2}\) にて求めた \(a_n\) が \(a_n=2\) にならない。ここはすべて検討外れだった)。