2020年5月11日
株式会社あいはら 研究開発チーム新型コロナウイルス感染症対策として、国内ではテレワークをされている方が増えています。
そのような中、気になるのは、テレワークに必要とされる自宅のインターネット回線や Wi-Fi の通信速度です。
家族が多くいらっしゃる一戸建て場合の実例は「テレワーク時代の Wi-Fi ルータ選び 〜 購入から設置まで 〜」で紹介されていますので、このページでは一人暮らしの賃貸住宅の場合の実例を紹介したいと思います。よく使われる用語等も前記ページで解説されていますので、そちらを参照していただければと思います。
現在私は賃貸マンションに住んでおり、インターネット回線はフレッツ光マンションタイプを利用しています。
しばらくの間、夜になるとインターネット回線の速度が非常に遅くなっていたのですが、一年ほど前に、VDSL から光配線に変わってからは、夜間でも遅くなるようなことはなくなりました (この変更はこちらから申し出たのではなく、大家か管理会社か NTT か、どこかの都合で行われました)。変更後は電話回線の接続口に光コンセントが増え、そこから光回線モデム「ホームゲートウェイ/ひかり電話ルータ」 (PR-500MI) へは光ファイバーケーブルで接続されています。
さて、賃貸住宅で各部屋に LANコンセントがない場合に困るのは、LANケーブルの扱いです。勝手に穴を開けたりはできないので、部屋をまたぐ場合、我が家では引き戸が完全に閉まらないような形で LANケーブルを引いていました。見た目はともかく、戸を開け閉めする際に、ケーブルを挟んでしまうこともあり、なんとかできないかと考えていました。
そんなときに見つけたのが、イーサネットコンバータ (Aterm WL300NE-AG) でした。
これは、Wi-Fi と有線LANの中継をしてくれる装置です。家電やゲーム機などで、有線LANしか持たない機器でも、Wi-Fi ネットワークに接続できるようになります。
これと併せて、同じメーカーの Wi-Fi ルータ (Aterm WR8750N) がセットで販売されていたので、同時に導入しました。
これらの機器の導入により、我が家のネットワークは以下のような構成になりました。
無線のところで、部屋が分かれており、引き戸もちゃんと閉められるようになりました。
なお、無線LAN機能を持つノートPCや、スマートフォン、タブレット等は、直接 Wi-Fi ルータ(アクセスポイントとして使用)に無線で接続しています。
Wi-Fi ルータ、イーサネットコンバータともに Wi-Fi4規格の機器です。また、スイッチングハブはギガビットに対応しています。
この状態で、デスクトップPCで、Google のインターネット速度テストを用いて通信速度を計測すると、以下の通りでした。
十分な速度が出ているようですが、同じデスクトップPCを有線で直接光回線モデムに接続した場合の結果は以下の通りです。
Wi-Fi の性能が、回線のスピードに追いついていないようです。
LANケーブルの引き回しが難しい住環境でのネットワーク構成をご紹介しましたが、残念ながら前述のイーサネットコンバータは生産が終了しています。
しかし、現在はイーサネットコンバータとしての役割も果たしてくれる有線LANポート付きの Wi-Fi 中継器があるようです。
以下、いくつかピックアップします。
実売価格 | メーカー/型番 | 主な仕様 |
---|---|---|
¥3,480 | BUFFALO / WEX-733DHPS | Wi-Fi5 433+300Mbps / LAN 1G×1 |
¥3,980 | BUFFALO / WEX-1166DHPS | Wi-Fi5 866+300Mbps / LAN 1G×1 |
¥5,480 | BUFFALO / WEX-1166DHP2 | Wi-Fi5 866+300Mbps / LAN 1G×1 |
¥8,500 | NEC / PA-W1200EX | Wi-Fi5 867+300Mbps / LAN 100M×1 |
¥14,302 | NETGEAR / EX7300 | Wi-Fi5 1733+450Mbps / LAN 1G×1 |
¥12,982 | NETGEAR / EX7700 | Wi-Fi5 866+866+400Mbps / LAN 1G×2 |
¥20,545 | NETGEAR / EX8000 | Wi-Fi5 1733+866+400Mbps / LAN 1G×4 |
さて、これまで使ってきた Wi-Fi ルータとイーサネットコンバータは8年ほど前に購入したもので、Wi-Fi の性能が、インターネット回線のスピードに追いついていないことと、できればより速いネットワーク環境を得たいことから、これを機に新しい規格に対応した機種を導入することにしました。
まず、Wi-Fi 中継器は上記の中から、WEX-1166DHP2 を選択しました。LANポートがギガビット対応であることと、入荷時期が近かったためです (2020/5/13現在は一時的に在庫切れになっています) 。
続いて、Wi-Fi ルータについて、上記 Wi-Fi 中継器の性能に合わせるには、Wi-Fi5 以上の規格を有する Wi-Fi ルータが必要になります。
Wi-Fi6 に対応した機器は、まだ我が家にはありませんが、将来増えていくと思われるので、ここは Wi-Fi6 に対応した機種を候補にします。
一人暮らしなので、同時接続数はあまり考慮する必要はありませんが、現状を把握するためにも、普段使っている Wi-Fi 対応機器を列挙してみます。
思ったよりもいっぱいありました。
さて、「テレワーク時代の Wi-Fi ルータ選び 〜 購入から設置まで 〜」でいくつか Wi-Fi ルータが紹介されていますが、現在すぐに入手可能な機種は、ASUS か NETGEAR の製品になります。
一人暮らしならゲーミング向けという選択肢もありますが、価格を考慮すると簡単には手が出ません。
最終的には、前記ページで選ばれていた ASUS RT-AX3000 か NETGEAR RAX40 の二機種に絞り込みました。前者は WPA3 対応というメリットがあります。後者は WPA3 以外の機能・性能はほぼ同じで、若干実売価格が安いというメリットがあります。
悩んだ末に、同じ機種を紹介するよりは別の機種の実例があった方がよいだろうと思い、RAX40 を購入することにしました。
先に、RAX40 が届きましたので、まず Wi-Fi ルータの設定と設置を行います。
内容物の確認と説明書をざっと読みますと、この機種の工場出荷時の設定では、IPアドレスが 192.168.1.1
に設定されていることがわかりました。
我が家では、192.168.1.1
は光回線モデムに割り当てており、そのまま自宅内のネットワークに接続するとアドレスが重なってしまいます。
そこで、まずは新しい Wi-Fi ルータの LANポートにノートPCを接続して基本的な設定を行います。
今回は有線で接続しましたが、無線で接続することも可能です。その場合は、WPS (Wi-Fi Protected Setup) を用いるか、本体のラベルに記載されている SSID と暗号化キーで接続します。また、スマホのアプリを用いた初期設定も可能なようです。
さて、Wi-Fi ルータの電源を入れ、ノートPCを接続したら、ウェブブラウザで 192.168.1.1
を開きます。http://www.routerlogin.net/
でもOKです。
初めて接続するときには、Wi-Fi ルータのWeb管理者ページにログインするためのパスワードの設定を求められるので、画面に従って設定します。
続いて、この Wi-Fi ルータは、アクセスポイントとして使うので、そのように設定します。
Web管理者ページの、[高度]>[高度な設定]>[ワイヤレスAP]と進めて現れる画面で、「APモードを有効にする」をオンにします。
ここで表示されている図によれば、光回線モデムとの接続は、Wi-Fi ルータのインターネットポート (WANポート) でよいようです。後で実際に試したところ、WANポートでも、LANポートでも、どちらでも問題なく動作しました。
さらに、同じ画面でこのアクセスポイントのIPアドレスを指定することができます。既存のルータからの自動取得と、固定IPアドレスの両方が可能です。今回は、既存のネットワーク内の他の機器と重ならないうように、固定IPアドレスを設定しました。
これで、自宅内のネットワークに接続しても問題なくなったので、光回線モデムに接続します。
後ろが整理されていなくて恥ずかしいのですが、次の写真のように光回線モデムや電話機の近くに設置しました。
サイズの検討を忘れていたので、実物を見たとき置き場所に悩みましたが、100均で買ってきた台所用の簡易な棚がぴったりでした。
その後、Wi-Fi ルータのファームウェアの新バージョンがあるようなので、Web管理者ページの画面に従ってバージョンアップを行い、Wi-Fi を利用している機器に、新しい Wi-Fi ルータの SSID と暗号化キーを設定していきます。
今回導入した Wi-Fi ルータを設定していて感じたのは、設定変更を行ったとき、その情報が保存され、反映されるまで、そこそこ時間がかかることです。進行状態がわかるインジケータが表示されるので、焦らず進めるのが良いと思います。
写真の通り、この機種には外部アンテナが2本ついていて、立てたり倒したりすることができます。別の機種では、もっとアンテナの本数が多かったり、向きも自在に変えられるものがあります。
アンテナの向きと電波が強く飛ぶ方向に関して、下記サイトが参考になりました。
なお、各メーカーでアンテナの向きに関する文書等がある場合は、そちらを参考にすることをお勧めします。
我が家では、垂直に立てた方がよさそうなので、写真のようにアンテナは垂直に立てて設置しています。
新しい Wi-Fi ルータを導入して、自宅のネットワークは以下のようになりました。赤枠の部分が新しくなったところです。
この状態で、デスクトップPCで、Google のインターネット速度テストを用いて通信速度を計測すると、以下の通りでした。
なんと、イーサネットコンバータは Wi-Fi4 規格の機種のまま変えていないのに、下りは速度が上がっています!
アクセスポイントの性能が上がったおかげだと考えられます。
ただし、上りは逆に下がってしまいました。
続いて、WEX-1166DHP2 が届きましたので、設定と設置を行います。
Wi-Fi ルータのときと同じく、内容物の確認と説明書をざっと読みます。
WPS で Wi-Fi ルータとの接続が可能なようなので、説明書に従って接続します。
接続後、いろいろ設定を行おうとしましたが、Wi-Fi 中継器の IPアドレスは自動取得になっていて、アドレスがすぐにはわかりません。しかし、メーカーが提供する「エアステーション設定ツール」を使えば、見つけてくれるようですので、説明書に従ってそのツールを Windows PC にインストールしました。
詳細な設定ができるようになりましたので、以下の通り設定変更を行いました。
Wi-Fi ルータへの接続が、2.4GHz Wi-Fi4 になっていたのは、2.4GHz での接続が優先されるようになっていたためのようです。Wi-Fi 中継器は遠くに Wi-Fi の電波を届けるのが主な役割の装置なので、このようになっているのだと考えられます (参考: Wi-Fiルーターの周波数帯(2.4GHz帯/5GHz帯)の違いについて)。
新しい Wi-Fi 中継器を導入して、自宅のネットワークは以下のようになりました。
この状態で、デスクトップPCで、Google のインターネット速度テストを用いて通信速度を計測すると、以下の通りでした。
古いイーサネットコンバータのときと比べて速くなっており、特に、上りの通信速度が大きく改善されました。
最近、プロバイダとの接続方式としてこれまでよく使われてきた PPPoE 接続での、回線の混雑という話をよく耳にします。それを回避する接続方式として IPoE 接続の利用があります。ただし、通常 IPoE は IPv6 で提供される接続方式ですが、それだと IPv4 のサイトに接続できなくなってしまいますので、IPv4 の通信でも IPv6 の経路上を流れるようにする技術である IPv4 over IPv6 を合わせて提供するサービスが様々なプロバイダで利用可能となっています。
プロバイダ | サービス名 |
---|---|
@nifty | v6プラス |
OCN | OCN v6アルファ |
So-net | v6プラス |
SoftBank | IPv6高速ハイブリッド IPv6 IPoE + IPv4 |
DTI | IPv6(IPoE)接続サービス |
BIGLOBE | IPv6オプション |
ぷらら | ぷららv6エクスプレス |
その他のプロバイダでも利用可能だと思います。また、IPv6 だけが使えるサービスも別途提供しているプロバイダもありますので、詳しくは、それぞれ契約中のプロバイダに相談してみるのが確実だと思います。
さて、我が家は So-net を利用していますので、「v6プラス」が利用できそうです。契約の変更ではなく、オプションの追加という形であり、初期費用や月額利用料の追加もありません。また、幸い我が家では、利用条件も必要な接続機器も揃っていたので、申し込んでみました。
プロバイダのサポート情報「v6プラス」の設定方法によると、我が家で使っている光回線モデムの場合、基本的に設定する必要はなく、すでに PPPoE 認証で利用しているので、光回線モデムの「PPP」ランプが消灯していれば、利用可能になっているということのようです。
手続きは思ったより速く進み、申し込みをした翌日には、光回線モデムの「PPP」ランプが消灯していました。この時点では、まだ利用開始案内のメールは届いていませんが、利用可能になったようです。
この状態で、デスクトップPCで、Google のインターネット速度テストを用いて通信速度を計測すると、以下の通りでした。
下りで 200Mbps を超えるスピードが出ています。また、上りは少し遅くなっていますが、誤差の範囲でしょう。
続いて、デスクトップPCで、無線ではなく有線で接続したときの計測結果は以下の通りです。
「フレッツ 光ネクスト マンション・ハイスピードタイプ(光配線方式)」の下りの最大速度は 200Mbps ですので、IPoE にすることによって、それを超える通信速度になりました。
通信速度の向上は喜ばしいのですが、「「v6プラス」と同時にご利用できないサービスについて」にあるように、いくつか利用できなくなるサービスがありますので、注意が必要です。
実際に、利用できないサービスとされている PPTP 接続を用いた、当社内ネットワークへの VPN 接続を試みたのですが、接続できませんでした。
なお、PPPoE に戻したり、また IPoE に変更する方法が、プロバイダのサポート情報「v6プラス」 (IPoE方式でのIPv4通信) を無効にする (または有効にする) 方法に書かれています。光回線モデムの設定のみで可能で、実際に試してみたところ、手順に従って特に問題なく変更することができました。即時に設定変更が有効になるので、どうしても必要な場合のために、覚えておくといいかもしれません。
ここで述べてきた IPoE および IPv4 over IPv6 の話は、So-net での話になります。他のプロバイダでは、契約や設定、利用制限についてなどに違いがあると思われます。よって、IPoE、IPv4 over IPv6 の導入を検討する際には、自身が契約しているプロバイダの提供する情報を参考にしてください。
我が家ではうまくLANケーブルを引き回すことができなかったため、Wi-Fi 中継器による部屋越えの方法を紹介しましたが、まずは有線LANでの接続を検討する方がよいかと思います。費用も安く、通信速度も無線より速いです。
IPoE および IPv4 over IPv6 の導入を検討する際には、利用条件や必要とする機器をよく確認しましょう。揃っていない場合は、契約の変更や、機器の手配が必要になるかもしれません。
また、多くの場合は問題ないと思われますが、前述の通り、利用できないサービスもありますので、注意が必要です。